florineのブログ

読んだり観たり遊んだりした感想

2013年10月の読書メーター

2013年10月の読書メーター
読んだ本の数:7冊
読んだページ数:1877ページ
ナイス数:102ナイス

ようこそ、わが家へ (小学館文庫)ようこそ、わが家へ (小学館文庫)感想
タイトルから、逆恨みでストーカー行為を重ねる名無しさんを自宅におびき寄せ対抗する話がメインかと思ったが、違った。銀行から企業の総務に出向した気の弱い主人公が、やり手の営業部長の架空取引や、他社の倒産を利用した売上金横流しの手口を暴いていく様子がスリル満点に語られ面白かった。半沢直樹で銀行の事が少し分かってきたところに、この話で更に理解が深まったと思う。最後に社長が経理のシングルマザーと主人公を評価してくれてよかった。勇気は報われなければね。
読了日:10月2日 著者:池井戸潤
大地のゲーム大地のゲーム感想
人の評価が酷く気になり怯えもするが、しかし自分は他人と違った存在だと信じ、年長者の経験と比較されるなんてまっぴら、自分の行動は美化して表現し安寧を得る。そんな学生達の生態が、大きな地震に被災した大学構内を舞台に描かれる。生き残った者が大地に根をおろしていく、という逞しさも伝わってきた。その地震のあとには津波がなかった事と、揺れが来る20分前に鳴る警報やシェルターが整備されている事から近未来の設定だと思うが、若さ故の混沌とした感情が細やかな比喩で丁寧に表現されていて生々しく、芥川賞っぽい作品だと思った。
読了日:10月7日 著者:綿矢りさ
新装版 限りなく透明に近いブルー (講談社文庫)新装版 限りなく透明に近いブルー (講談社文庫)感想
山田詠美の「クリトリスにバターを」を読んでこちらも再読。初読は19か20歳の時。大学の友達と感想を話し合ったのを覚えている。ドラッグ・セックス・暴力に明け暮れる横田基地の若者たち。その荒廃した生活が、今なら問題となるであろう表現も含め鋭い言葉で淡々と綴られ、あまりにリアルで自分が乱交パーティの只中に居るかの如き不快感を共有してしまう。綿矢りさが巻末の解説で「作家と読者が互いの頭のなかにまったく同じ映像を思い浮かべる」文章力と讃えていたが、昔の芥川賞はずいぶん過激だったんだなと。残ったのはリュウの喪失感か。
読了日:10月9日 著者:村上龍
残り全部バケーション残り全部バケーション感想
当たり屋だの脅しだのを請け負い直感で行動する溝口と、その助手だった岡田の物語。関係者サイドの短編でエピソードが語られ、最終章で見事につながる。『グラスホッパー』『マリアビートル』と同じ手法に大人の美学がブレンドされ、お洒落なお伽話のようで読後感が爽やかだった。ターミネーターを捩った「タキオン作戦」が面白すぎる。教授と教え子の会話には爆笑。「小さな兵隊」の「悲しみを忘れなければならない。僕にはまだ残された時間があった」も心に残る。岡田の復活シーンをあれこれ想像していたが、楽しい終わらせ方に参りました。
読了日:10月16日 著者:伊坂幸太郎
グラスホッパーグラスホッパー感想
自殺屋の鯨、ナイフ使いの蝉、押し屋の槿、そして亡き妻の復讐のため《令嬢》に潜入した鈴木。皆個性的だが、非現実的な能力を持ち同じ文庫本を何度も繰り返し読む鯨が印象的だった。沈着冷静な槿には憧れるが、一瞬たりとも気の抜けない人生は疲れそう。本来嫌いなチャラいタイプの蝉が案外好きだったり、キャラ構成の妙を感じる。現実世界に無事戻れたのがありふれた呼び名の鈴木だったのは当然の理か。随所に展開されるジョークがいちいち面白い。もし無人島に一冊だけ本を持って行けるとしたら、逆に読むと「唾と蜜」になる本を私も選ぶ。
読了日:10月23日 著者:伊坂幸太郎
名探偵マーニー 3 (少年チャンピオン・コミックス)名探偵マーニー 3 (少年チャンピオン・コミックス)感想
面白いところもあるけど、詰め込み過ぎなのか中途半端に終わった感じがする事が多い。
読了日:10月24日 著者:木々津克久
リライト (ハヤカワ文庫JA)リライト (ハヤカワ文庫JA)感想
私が北海道のラベンダー畑を見に行きたいのは、筒井康隆の『時をかける少女』によるところが大きい。ケン・ソゴルLOVE。北村薫の『スキップ』『ターン』『リセット』三部作、ケン・グリムウッドの『リプレイ』、最近急に有名になった(笑)ロバート・F・ヤングの『たんぽぽ娘』、ハインラインの『夏への扉』も好きだ。タイムトラベルものにはパラドックスがつきものだけど、それを前面に押し出した本作品はなかなか面白かった。1992年③で殆ど分かってしまうのが残念。あと最後の種明かしは荒木のような冷静派に語って欲しかった。
読了日:10月25日 著者:法条遥

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